経営者・人事担当者からよく聞く、人材育成の悩み
人材育成支援の現場で、私はお客様から様々なお悩みを耳にします。
・スタッフが思う通りに動いてくれない。積極的に接客や営業をしてくれない
・表面上は言う事を聞くけど、納得しないと実際は動かない
・自分が会社の人間として見られている自覚をなかなか持ってくれない
・仕事はできるはずなのに、コミュニケーションがネックで顧客からの評価が上がらない
・企業理念が社員に伝わらない
・現場がギスギスしていて、内部のコミュニケーションがうまくいかない
業種や事業フェーズによって実際に表出する課題は様々です。 ですが、多くの現場で繰り返し相談を受けていると、あることに気づきます。
実はこれらの課題は、根本にある問題は共通しているんです。
悩みの根っこは、実はすべて同じ
多くの企業には、すでにマニュアルがあります。研修制度も整っています。「こう対応してほしい」「こういう雰囲気を大切にしてほしい」という方針も、言葉としてはきちんと伝えられています。従業員側も、頭では理解していることがほとんどです。
それでも、現場は変わりません。
これは、伝えている内容そのものが間違っているからではなく、伝えた内容が本人の中で「自分ごと」として腹落ちしていないことが原因であるケースが非常に多いのです。
指示は届いている。けれど自分ごと化されていない。だから、マニュアルに書かれていない想定外の場面になった瞬間に、対応が崩れてしまう。あるいは、表面的には従っているように見えても、心が動いていないぶん、行動の質としては表れてこないのです。
これは、知識や型を追加すれば解決する問題ではありません。「理解している」と「自分の行動として選び取っている」の間には、大きな距離があります。
研修で解決できる問題・できない問題
ここで一つ、明確にしておくべきことがあります。現場で起きている問題のすべてが、人材育成やコミュニケーション研修によって解決するわけではありません。
- 業務フローが非効率で、現場が回らないほど忙しい状態が常態化している
- 採用の段階で、求める人物像と実際に採用した人材にズレが生じている
- 評価制度や労働環境そのものに、構造的な課題がある
以下のような要因が根本にある場合、研修や育成で得られる効果は限定的になってしまいます。もし自社の状況に心当たりがある場合は、まずこちらの見直しから着手する方が、遠回りにならずに済むことも多いです。
私がいつも投げかける、3つの問い
それでも、確かに人と人とのコミュニケーションの部分にボトルネックがありそうだ、という時に、私が実際に研修の中で投げかけている問いが3つあります。
1. 自社の企業イメージは、どんなものですか? (高級感、アットホーム、元気、プロフェッショナル…など)
2. そのイメージにふさわしい態度・言葉遣い・コミュニケーションとは、具体的にどんなものですか?
3. では実際の現場では、それがどの程度、体現できていますか?
驚くほど多くの企業で、1と2の時点で、経営層とスタッフの間で答えがバラバラになります。会社が大切にしている姿勢が、そもそも現場の一人ひとりの中で「自分の言葉」になっていない。だから3番目の質問に、自信を持って答えられる人が少ないんです。
マニュアルを直す前に、まずこの3つを社内で言葉にしてみるだけでも、見えてくるものがあると思います。
型を教えるのではなく、判断軸をつくるという発想
企業向けの研修というと、接客用語やビジネスマナーといった「型」を教え込むイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、それだけでは、想定外の場面での対応力にはつながりません。
重要なのは、この3つの問いを経営層だけでなく、スタッフ自身が自分の言葉で語れるようになることです。そこから、想定外の場面でも自分で判断できる「軸」を育てていくという関わり方が、結果として現場の対応品質を底上げします。
AIがどれだけ進化しても、この「自分の言葉で状況を判断し、心を伝える力」だけは代替できません。むしろ、標準的な対応をAIがこなせるようになるほど、人にしかできないこの部分の価値は相対的に上がっていくと考えています。
この記事を書いた人
内山歩美|合同会社Hestia 代表

マーケティング支援事業と企業向け研修事業を展開。多業種・多国籍のクライアント支援に携わってきた経験をもとに、企業理念や現場の実情に合わせたコミュニケーション設計を行う。机上の理論にとどまらない、現場起点で成果をつくる伴走型支援をコンセプトに、企業の事業成長と人材育成をサポートしている。
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